雪降り積む河原に
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深夜の川原には雪が降り積もっていた
月の明かりも街灯の光も射さず
夜の闇は濃密で息苦しくなるほどだったが
雪のせいなのか
僕の足元辺りは仄かに明るくて
芒や葦の枯れた穂先がそこ此処に
その頭を出しているのが見えた
真っ黒な川は、
もっと先だ。
僕は、その音もなく色もなく
黒々と流れ早い川に
身を投げむと、本当に思っていたのかどうか
膝ほどに積もった雪に足を取られながら
一歩、一歩、
と、進んでいった。
足は次第に凍え、痺れて、
怯えが胸にまで迫り上がって来た。
川は、もうすぐそこ、
目の前だ。
進まねばならぬ
と、僕は思った。
だが、棒杭のように感覚のなくなってしまった足は
僕の意志に応えなかった。
川まではもう、そこ、
ほんの数歩先だった。
だが、足は、
前には出なかった。
いや、正直に、正しく言うなら、
今になって思い返してみれば、
進めたくなかったのだ。
その川に身を投げたくはなかったのだ。
僕は、引き返した。
屈辱と無念と不信と軽蔑と自蔑にまみれ
無意味と断じた土手に
僕は引き返した。
凍てつき痺れた足は思うように動かなかったが
倒れ倒れて
僕は、引き返した。
足ばかりか、手までが痺れてままならず
漸く上った土手を走るアスファルトの道は濡れて
白く光っていた。
その道を歩いて、
僕は家に帰った。
おめおめと。