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「僕たちが 本当に求めていること(二)」

全き素直さを持って自分自身の心の最深奥を尋ねるなら、
僕たちは自分が本当に求めていることに気づく筈だ。
 
 僕たちは、自分の存在が永遠に続いて、
今の自分をもっと伸張させたいと望み、
そしてその自分の存在が意味あるものであることを願い求めている。
 
 自分はこんな業績をこの世に残したと満足する人であれ、
我が子を立派に育てた、先祖からの田畑を守り抜いた、
世に貢献して来たと自らを称賛する人であれ、
或いはまた、
自分の存在には何の価値も意味もないと自分自身を切り刻んで呪って
何ものをも信じることができなくなってしまっている人であれ、
僕たちは願い求めている。
 
 
 最早何の望みも欲求もないのだなどと、
まことしやかな嘘で自分自身を欺いてはならない。
 
 僕たちは心の最も深いところから切実に望んでいる。
求めている。
 
 自分自身の存在が永遠であることと、
それが意味あるものであることを求めている。
 
 これはエゴイズムというものではなく、
いわば自意識を超え出た生命の根源的な欲求なのだ。

 良いとか悪いとか、醜いとか美しいとか、
認められるとか輝くとか、愛されているとかいないとか、
そんなこの世の価値基準を超え出た次元の根源的欲求なのだ。

僕たちはこれによって生きているのだ。

この厳粛な事実を認めること、
そうしない限り、僕たちは本当に生き始めることができないと、
僕には思える。

  

「人生とは何か、人間如何に生きるべきか」を問い続けること、そして思い考え感じた、それら名状し難い混沌をキャンバス上に表すことが僕の生涯をかけた仕事である。表現方法としては、西洋の材料である油絵具に金箔、銀箔、和紙、膠など日本の伝統的素材を加えて、これまでにない新しい世界観を表そうと考えている。わび、さび、幽玄など日本文化の最深奥に流れている概念があるが、そういう概念を介さずに直接心を打ち貫く切実さを描きたい。ものの持つ本来の面目を。

前 壽則 Mae Hisanori

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